世代交流から学び合おう!

concert20140622初夏の気配漂う6月22日の昼下がり、今年も飯田真基さん(17期vn)のご主人で自身が建てられ、大事にしておられる南森町のモーツアルト・サロンをお借りして、コンサートと講演会、そして総会懇親会が行われました。

恒例となった前半の若手によるコンサートでは、3組の同窓生が瑞々しい演奏を披露して下さいました。最初の阪口さんは今春卒業されたばかりですが、愛らしいながらも堂々とした歌唱力でレスピーギの歌曲、ドニゼッティのオペラアリアを歌われ、同期のピアノ平本直規さん(大学院在)はしっかりとサポートされていました。

 

続く、ピアノ独奏の宮崎真理子さんは、すでにいくつかのキャリアをお持ちで、前日もシンフォニーホールでの本番(コンクール)を終えられたばかりなのに連日の疲れも見せず、未だ日本では知る人の少ないポーランドの女流作曲家バツェヴィチのピアノ・ソナタを集中力ある演奏で惹きつけて下さいました。

 

最後はフルート本庄ちひろさんとピアノ西岡仁美さんによるプロコフィエフのフルート・ソナタ、同級生の気心知れたあうんの呼吸でキャッチボールするデュオを楽しませてくれました。皆さんの初々しく生気あふれる演奏に心からの暖かい拍手で前半の幕。

 

小休止のあと、後半は大先輩 松本真理子さんをお招きして「音楽は社会に貢献していますか?」(仮題)の講演会。
マリンバ奏者としてはもちろんのこと、音楽の枠を超えて、地域での重要かつ多彩な活動を続けておらる松本さんは「社会のお母さん」としても毎日フル回転なさっています。

 

そのお話は、「京芸はとても優秀で、いろんなところで大活躍している、なのにどうして挨拶できないの?」との苦言から始まりました。「挨拶とは社会の扉をたたくこと。まずきちんと挨拶のできる人でなければならない、社会に巣立ったその時から自分の本当の演奏が始まるのです。演奏は先生のコピーであってはいけない、信念を持った自分の音楽がなければ社会の中で潰されてしまう」と。音楽家である前にまず社会性のある人間であること、そのために社会のニーズを知り、コミュニケーション能力を常に磨いていくことがとても重要であると説かれます。また女性の音楽家が行政の中で認められる存在になるまでのご苦労の話や、障害を持つ人たちとの長年の交流の中でご自分の音楽の原点を見つけられたお話など、ユーモアを交えながら時に厳しく時に優しく、誠心誠意語って下さる松本さんのお話は本当に心に響く貴重なものでした。

最後におっしゃった人間が生きていく上で大切な「真理子のキーワード~5つのH~」、「Hand」(技能)、「Head」(今するべきことは何か)、「Health」(健康)、「Harmony」(調和…空気を読む)、「Heart」(人間が好き)は、私も是非今後心に留めておきたいと思います。自分の腕を常に磨きながら、心を尽くして人と関わり、調和していく中で生まれる音楽はきっと社会に貢献し得るものとなるのでしょう。

講演のあと、会場からは「たくさんの元気をもらえた」「先輩が何を考えて活動しているのかを知り、これから私がどのように生きてゆけばよいのかヒントがいただけた」などの声が聞かれました。

 

 

場所を移して向かいの喫茶店へ、先ほどの出演者、講演者を囲んで和やかに談笑、その後、総会議事へと進みお開きとなりました。

盛り沢山な一日、充足感にひたりながら帰路に着きました。今、教育がとても難しい時代にきています。少子高齢化が加速する中、働くお母さんは年々増え、小中学生がスマートフォンを普通に持つ時代となってきました。一方、学校が定員割れを起こすことも珍しくなくなり、存続にやきもきする現状、モンスターペアレンツなるものも出現し、先生と生徒の関係も微妙に変化してきています。正直、昔に比べて、親、先生の立場が弱くなってしまった。しかし、おびただしい情報、価値観の多様化の中で途方に暮れている子どもたちを多く見かけます。今こそ臆せず、大人たちがしっかりとした強い気持ちで子どもたちを導いていかなければ日本の将来はないでしょう。勇気と信念を持って教育活動に携わってこられた松本さんのお話を聞かせていただいてシャキッとしなければ、と新たなパワーをいただきました。

 

未来に向かって羽ばたこうとしている若い同窓生の演奏に触れて、五感、六感を奮い起し、一方で大ベテランのたどってこられた人生の貴重なお話に耳を傾ける、世代の縦軸を繋げて、お互いの理解を深めていけるこのような異世代交流の機会を、これからも是非続けていきたいと思っています。

 

副支部長 大冨栄里子(28期pf)

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