真声会大阪支部 支部報発行(No.100)

新年を寿ぎ、次のステップに向けて思うこと

真声会大阪支部、支部長
大村 益雄(1期、作曲)

あけましておめでとうございます。お健やかに新年を迎えられたこととお慶び申し上げます。本年もよろしくお願い申し上げます。経済的にはそれほど恵まれていない、アフリカや、東南アジアや、南アメリカの、多くの国々を実際に訪れ、それぞれの民族の心の温かさを胸に強く感じて、日本に帰ってくると、いつもホッとします。海外の国々では、厳しい生活環境の中にも、人々の強い意志と心の温もりを感じますが、日本では、終戦後に見られた衣食住の厳しさは、すでに昔のこととなり、今では、穏やかで、安全で、思いやりの深い国になりました。地震や津波が起きても略奪などの暴動は起きません。お年寄りや体の不自由な人に、電車やバスの中で、席を譲っている若者が増えてきたような気がします。官公庁の受付も丁寧になりました。街で買い物をしても、やり過ぎではないかと思うぐらい、とても親切です。

一方、世界の政治情勢は、近年、つとに厳しさが増してきています。シリアやスーダンにおける内戦のほか、近隣国の中国や韓国と日本との信頼関係も良くありません。原因の多くは、その国の内政事情にあると思いますが、それとて他人ごとではありません。日本の政治においても、秘密保護法が成立し、首相の靖国参拝が問題提起されるなど、戦前、戦時中の緊迫した社会世相を思い起します。今の日本人は、もっと豊かな心を持っているはずで、温厚な振る舞いの中に、不測の事態に備えた配慮をしながら、国家間の交流を大切にして、物事を着実に解決していく道を辿らねばならないと感じています。

交流といえば、真声会の本部活動として、去る11月27日(水)に、京都市内のレストラン、ウイズユーにて、美術学部同窓会と、音楽学部同窓会との「交流会」を行いました。美術学部は、上村淳之同窓会会長と、お二人の副会長をはじめ、学内代表幹事、学外代表幹事が出席され、音楽学部は、私、真声会会長と、大西多惠子副会長、松本真理子副会長、朴実編集委員長、三井ツヤ子理事、佐藤敏子会計役員、が出席いたしました。

京芸内は、美術と音楽という二つの学部に分かれていますが、このような交流のための会合が今まで一度も持たれていなかったことが不思議なぐらいです。共に親しく、打ち解けて意見交換をすることができました。いわば、京芸発展のための、歴史的な会合になったと言うことができます。そして、両同窓会は,設立経過や歴史の違い,それぞれの活動の独自性を互いに尊重しながら,京都芸大の発展に寄与するために、お互いに協力していくことなど,5つの事項について合意しました。詳しくは、京都芸大ホームページをご参照ください。(http://www.kcua.ac.jp/information/?mp=37854)

大阪支部の活動としては、去る9月29日(日)に、第10回記念ブリリアント・コンサート行い、第12期卒業生から、第53期卒業生までの幅広い年齢層の出演者により、バラエティーに富んだ演奏が行われ、大変盛況の内に終えることができました。また、今回で、大阪支部会報も第100号を迎えることになりました。真声会大阪支部は、縦に、横に、同窓の固い絆で結ばれ、特に、縦糸がうまく繋がっていることが何よ
り嬉しいことです。これらの活動は、多くの方々の長年に亘る積み上げの成果であり、世話役、役員の方々、支部会員の皆様に厚くお礼を申し上げます。

今後の課題としては、クラシック音楽の楽壇に内在している大きな問題点があります。明治以来、上流階級の人々の教養音楽として西洋より移入されたクラシック音楽は、ようやく100年余りを経過して、一般社会の人々に普及してきました。クラシックの演奏会も随分多く催されるようになりました。しかし、音楽を楽しんで聴きに来ていただく聴衆が育ってきているのだろうか、それらの聴衆によって、本当に、クラシック音楽が支えられているのだろうか、が疑問なのです。音楽レッスンや、音楽コンクールによって、クラシックの音楽をいつまでも支えることはできません。自然な音楽の成り立ち方へと移行して行かねばなりません。音楽をエンジョイし、自ら音楽を評価できる、健全な聴衆の更なる増加が必要なのです。

聴衆の育成を促進する音楽教育のあり方に意を注ぎ、他の芸術ジャンルの活動家とも積極的に交流し、話し合いを深めて、具体的な活動を起こしていくことこそが、次のステップとして大切なことだと思われるのです。

真声会大阪支部 支部報No.100のPDF

支部報掲載写真のカラー版
出演者全員 司会 Quintet Nakabayashivocal MoriikeVocal Duopiano Hinouepiano shibatavocal iwai piano トリオ

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