西岡仁美(51期pf)

フランスからの便り 第4回

今年も残すところあとわずか。
パリの年の瀬は、例年に比べて比較的穏やかな気温で過ごしやすいですが、残念なことに、分厚い雲に蓋をされたように、ここ数週間優れない日々が続き、ちょっと憂鬱な毎日となっています。
とはいっても、ヨーロッパの12月は何といってもクリスマスの時期、11月末より、街はクリスマスのデコレーションでどこもおめかしされ、各地でクリスマス市も開かれ、賑やかな様子です。街を歩いていると、こちらもウキウキしてきます。

日本では、「クリスマス」というと、サンタクロース、ツリー、クリスマスケーキ、プレゼントなどがイメージされますが、ヨーロッパではやはり宗教と密接に関わってきます。
教会ではこの時期、クリスマスミサやクリスマスコンサートなどが行われます。また、「クレッシュ」と呼ばれる、人形でイエス・キリストが誕生した場面を再現したものも見られます。これは、馬小屋(家畜小屋)で生まれたイエスを祝う人形セットで、みどり児イエスの周りに聖母マリア、東方の三博士、天使、そして家畜などが置かれます。教会だけでなく自宅などでも飾られ、ツリーとともに、クリスマスには欠かせないものの一つです。

教会に足を運ぶと、ろうそくに火が灯った薄暗い中、しんとした空気とともに、音楽が流れ、いつもにも増して厳かな気持ちになります。
音楽が、付随のものであったこと、しかし、そこに無くてはならないものであることを、強く感じます。
宗教との関連ももちろんのこと、古楽を勉強してから、踊りなどと密接に関わっていることも改めて学びました。もちろん現代でも、映像を引き立てるものとして、音楽は一役買っていますよね。
いずれにしても、音楽によって、人は心に何かを感じ、思いを馳せ、高揚したり消沈したり、願うことが出来るように思います。私は、そんな素晴らしい音楽にたずさわっていることを幸せに感じます。

クリスマスが過ぎると、すぐにお正月。
こちらは、クリスマスが盛大な反面、年が明けると意外にあっけないものです。お正月を海外で過ごすと、初詣やおせち料理など、日本が恋しい気持ちになります。
とはいえ、年に一度の2つのビッグイベントを大いに楽しみながら、今年一年間を振り返り、2013年の抱負を定め、これからも音楽とともに歩んでいけるよう、精進していきたいと思います。

2013年が平和な年となりますように・・・

2012年12月末日
西岡仁美(51期 ピアノ専攻)

 


フランスからの便り 第3回

芸術の秋。日本もまだまだ日中は暑いものの、朝晩ずいぶんと涼しくなって来ましたね。
9月に新学期が始まったものの、そこはフランス、長かったヴァカンス気分がまだ抜けず、やっと本格的に始動するのが、この10月です。

なぜこんなダラダラと始まるのか?それは、音楽院だけでいうと、入学試験の形態に問題があると思います。音楽院や学部にもよるのですが、ヴァカンスが終わり新学期の始まる9月に入ってから、入試を行う音楽院がほとんどだからです。
ですから、受験生のこの時期はめまぐるしいものです。日本から留学される方はなおさら、合格が決まったらすぐ、次の週から授業が始まるなんてことも珍しくないので、引っ越しや留学の本格的な準備、入学の手続きなどで皆てんやわんやしています。

今年留学7年目となる私も、そんな時がありました。あれから6年、良くも悪くも本当にたくさんの経験をさせてもらっています。
便利さや清潔さ、住みやすさなどを考えると、日本は圧倒的に良い環境だと思います。
ではどうして海外がこんなに魅力的なのか。
「芸術がそこに息づいているから」だと、私は思います。
もちろん巨匠と呼ばれる富や名声を与えられた、素晴らしい芸術家もたくさんいます。でもそれは、ヨーロッパといえども一握りの人たちだけかもしれません。
「ラ・ボエーム」という、パリが舞台のイタリアオペラもありますが、貧しくても自由に生活し、音楽だけでなく、純粋に芸術を楽しんでいるボヘミアンな暮らしがそこにはあるのです。
時には辛いことや苦しいこともありますが、アウトローな暮らし、「芸術家」であることの誇りや責任を感じることができるのも、ヨーロッパ(とくにフランス?)で生活して得ることのできる、最大の利点ではないでしょうか。

10月に入ってやっと始動したかと思ったのもつかの間、月末にはまた秋のヴァカンスに入るフランス。
「どんだけ休むねん!」とヤキモキすることもありますが、そんな時にはこちらも小休止。
美術館めぐりをするのもよし、公園で読書に耽るのもよし、美味しい料理に舌鼓を打ちながら、深まる秋を感じ、のんびりと芸術を楽しみ、芸術にたずさわることのできるありがたみを感じるのも、良いのではないしょうか。



2012.10.1 西岡仁美(51期 ピアノ専攻)


フランスからの便り 第二回

アジアカップ予選に沸いた6月も終わり、日本は梅雨の真っ只中、先日は早々と台風が到来し、和歌山では大きな被害が出たとのこと、うっとうしい毎日が続いていることでしょう。
こちらフランスでも、初夏に向けて、晴天の最中、突然のスコールのような雨に見舞われたりと、不安定な気候が続いています。
またヨーロッパも同じ頃、ユーロカップに燃えていて、私は幸いにも先日、6月17日にポーランドのグダニスクにて、コンサートをする機会に恵まれ、ユーロカップの開催されている現地に向かいましたが、その前日がちょうどポーランド対チェコ戦だったこともあり、街中大賑わいでした。(残念ながら、ポーランドは負けてしまいましたが。。)

さて今回は、学生たちのこの時期の様子をお伝えしようと思います。
こちらは6月末が年度末。学年末試験や卒業試験で、学生たちは皆忙しい毎日を送っています。
日本の場合、単位さえ取れれば免状とともに晴れて卒業できますが、フランスでは、試験の結果によっては、免状をもらえないまま卒業という場合もあります。
それが稀ではないので、卒業試験を控える者たちは皆ピリピリしています。
留学生にとっても、留学生活の終止符として、免状があるのと無いのでは大違いですよね。
年によっても審査員によってもジャッジが異なるので、大変です。
毎年、入学発表と同じくらいのドラマが、そこには生まれます。

そして、それが終われば、晴れて夏のセールと2ヶ月のバカンス!
そろそろ街中が浮き足立ってきています。
音楽学生にとっては、この夏休みの間にスタージュ(講習会)やマスタークラスを受講し、秋の入学試験に向けての準備をする、大事な時期にさしかかります。
フランスは年々それぞれの学校のシステムが変わり、そのたびに入試の条件や日程なども異なるので、事前の情報収集がとても重要になってきます。
にもかかわらず、各学校からの入試の開示などは非常に遅いしお粗末なものなので、
留学を考えていらっしゃる方は、フランスにいる人とコンタクトを取って、情報を得るのが望ましいと思います。

留学を終え、日本に帰っていく人たち、新たな学校、学科に挑戦する人たち、そして、これから留学を考えて、やってくる人たち。。
それぞれの転換期であるこの時期、アツい季節の到来です。

写真は、1枚目がポーランドのグダニスクの風景、

2枚目は、その学校近くから見たリヨン市の景色、

3枚目は、私が2年間通っていたフランスのリヨン国立音楽院です。

 

 

2012年6月26日 パリにて    西岡仁美(51期 ピアノ専攻)

 


フランスからの便り 第一回

4月。日本は新学期の時期ですね。
新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。
日本は例年より寒いということで、桜の咲く頃がちょうど入学式に重なりそうですね。
こちらフランスでは、3月下旬から暖かい陽射しが差し込んできました。
お日様が翳ると、まだまだ肌寒く感じることもありますが、
天気の良い日は、仕事も勉強も忘れて、公園でのんびり、
ついでに昼間からお酒が飲みたくなる・・・何とも悩ましい季節です。
この時期、春のバカンス(イースター休暇)ということもあって、絶好の季節に街はにぎわっています。

さて、日本では新たな年度を迎えるこの季節、
フランス生活6年目の私は、私たちが勉強しているクラシック音楽、
それは、過去へタイムスリップするものだと感じています。
こちらでのコンサートはというと、もちろんホールで行われることもありますが、
古い教会や修道院などで演奏されることもしばしばです。
何百年前から、ずっとそこにある建物の中で、その頃から愛されている音楽を奏でるということ、
それが私たちの行っていることなのだと思うと、何とも言えない気持ちになります。
特に、私事ですが、昨年リヨン国立音楽院の大学院課程を卒業し、
今年度からピアノフォルテの勉強を始めたことにより、
当時の楽器(複製品だとしても)を奏で、その頃の文献を研究していると、
一歩外に出て、街の喧騒を聞いた途端、現代に呼び戻された感覚に陥ります。

私たちが今演奏している音楽を作り上げた音楽家たち、
彼らは各々、どんな春の訪れを感じて、日々を過ごしていたのでしょうか。。
のどかな日の光に誘われながら、そんなふうにぼんやりと思いを馳せる、
今日この頃です。

51期 ピアノ専攻 西岡仁美

 

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