松村桃子(43期vn)

ボストンから カナダの ウィニペグへ

皆様新年あけましておめでとうございます。新しい年も昨年に増した良き年でありますようお祈り申し上げます。私達は昨夏4年間住んだアメリカのマサチューセッツ州ボストンを離れ、カナダのマニトバ州ウィニペグに引っ越してきました。カナダの中西部に位置するマニトバ州の州都であるウィニペグは、人口約70万人でカナダらしく多くの移民が住んでいます。フランス系、イタリア系、ウクライナ系、フィリピン系の移民に加えてネイティブカナディアンがそれぞれの地域を作って暮らしています。車で 30 分も走れば辺りは見渡す限りの平原、美しい自然に囲まれた所ですが、北米の都市では一番寒さの厳しい都市といわれ、真冬には体感温度がマイナス 40 度以下にもなることがあります。毎年 10月から 11 月にかけて降る初雪は溶けずに次の年の 5 月頃までそのまま残るので、1 年のうち半分以上が雪と氷に覆われている計算になります。そんな極寒の地ではありますが、人々は積極的に外に出かけてウィンタースポーツやエンターテイメントを楽しんでいます。雪の為にイヴェントがキャンセルになる事はほぼありません。主人がレジデントコンダクターを務めるウィニペグ交響楽団も年間を通じて様々なコンサートを主催しています。子供の為のコンサートには 3 歳半になる娘も一緒に聴く事ができるようになり、娘の成長をとても嬉しく思います。私は秋からシステマ・ウィニペグという子供の為の音楽教育プログラムで教え始めました。日本でも有名なベネズエラのエル・システマをモデルにしたこのプログラムは市内でも貧困層の人々が住む地域の学校で、毎日放課後に 3 時間子供たちがオーケストラをはじめとした様々な音楽活動をするものです。様々な家庭の問題を抱えた子供たちも多くいますが、音楽とふれあうこの時間が、彼らにとって心安らぐ時間であるようにと願いながら毎回指導にあたっています。私自身が受けた音楽教育とは全くタイプの異なる教育の方法ですので、いろいろと勉強になる事が多く興味が尽きません。指導に行くと嬉しそうに飛びついてくる子供たちの成長ぶりを、これからも見守っていけたらと思います。ここウィニペグには3 年ほどの滞在予定ですが、ここで色々な経験ができる事を楽しみにしています。

 

松村 桃子(43 期 vn)

 

冬のウィニペグ市街

システマウィニペグの子供たち

 


アメリカからの便り

11月末の感謝祭(サンクスギビング)が過ぎると、街は一気にホリデーの雰囲気に包まれます。同時に気温も一気に下がり、本格的な冬を迎えます。今日は、アメリカの年末の音楽事情をお話します。

日本では、ベートーヴェンの第9交響曲が年末の風物詩となり、各地で演奏会が開かれます。京都芸大での学生時代を含め、師走の声を聞くと私も毎週のように第9交響曲を演奏したのを懐かしく思い出します。一方、ここアメリカで年末の代表的な音楽の風物詩といえば、へンデルのオラトリオ“メサイア”、バレエ“くるみ割り人形”そして、“ホリデーポップスコンサート”です。

ヘンデルの“メサイア”は3部から構成されており、ハレルヤコーラスが特に有名です。全て演奏すると、約2時間半という長大な曲なので、普段のコンサートでは何曲かを抜粋で演奏する事が多いです。一度、所属するオーケストラで全曲を演奏する機会に恵まれましたが、演奏終了後は、まるで長距離を走り終えたランナーのような気持ちでした。

チャイコフスキーのバレエ“くるみ割り人形”は、オーケストラのみで組曲を弾く機会も多いのですが、やはりバレエと一緒に演奏すると、この曲の持つ幻想的な雰囲気を実感できます。バレエ団によって、衣装・振り付けが違うので、それを見るのも楽しみのひとつです。

最後に、“ホリデーポップスコンサート”は、どこでもチケットが売り切れになる人気のコンサートです。様々な人種・宗教の共存するアメリカでは、当然の事ながらクリスマスを祝わない人達もいるので(クリスマス以外の祝祭としては、ユダヤ教の“ハヌカ”、アフリカン・アメリカンの人達のお祝い“クワンザ”があります)コンサートのタイトルも“ホリデー”としているのでしょう。演奏されるのはほとんどがクリスマスの曲ですが、ハヌカの曲も演奏されます。アメリカではポップスコンサートを弾く機会が沢山あるのですが、個人的に私はポップスコンサートが大好きです。聴衆のノリも良く、反応がすぐに返ってくることに加え、こちらのオーケストラにはポップス専門の指揮者がいて、彼らの手にかかるとコンサートが華やかなショーに早変わり!演奏する側もとても楽しめます。

2010年は皆様にとって、どのような一年でしたか?私事ですが、2010年は人生の大イベントである妊娠・出産を経験した、忘れがたい1年になりました。来る2011年も、皆が平和に過ごせますように願ってやみません。どうぞ良いお年をお迎えください。

松村桃子(43期vn)

アメリカ、マサチューセッツ州ボストン在住

*松村さんは、2005年12月の大阪支部主催のフレッシュ推薦コンサート(当時)に、平井令奈さん(pf)とフランクのヴァイオリンソナタで出演されました。2000年ごろからたびたびアメリカに赴き研鑽、活発に演奏活動を積むうち、今ではしっかりアメリカの人です。でも大阪支部会員です。(編集子)

この写真は、ボストンにある歴史的建造物である”ファニエル・ホール”の前のクリスマスツリーと時計台です。ボストンは最高気温がマイナス6度、といった寒さです。

 

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