高野良輔(51期pf) no.2

「テッペンカケタカ」

この時期よく耳にするこんな鳴き声の鳥、そう、ホトトギスだ。

托卵の習性があり、国内では主にウグイスの巣に卵を産み(托卵先はウグイスのみか他にも候補があるのかどうかは知らない)、ホトトギスの卵はこの巣に元から置いてあるウグイスの卵よりも早く孵るそうだ。そして孵った雛ホトトギスはまだ孵っていないウグイスの卵を全部巣から蹴落として自分だけが残り、気が付かない親ウグイスは雛ホトトギスが自分より大きくなっても餌を与え続ける、ホトトギスはそんな鳥である。

今年はそのホトトギスのテッペンカケタカをまだ聞いていない。毎年ウグイスが鳴き終えたあたりの時期から夜な夜なホトトギスの鳴き声が聞こえてきて睡眠の邪魔をするのだが、どうやら今年はウグイスの数が少なかったらしい、というのは、いろいろ聞いたところその年のウグイスの数とホトトギスの数が比例するらしく、ウグイスが多ければその分蹴落とす卵のある巣が多いわけで、そこにホトトギスが托卵できる可能性もグッと広がるということらしい。今年はどうやら少ない年みたいだ。

そのホトトギスに口笛で返事をする遊びをたまにやる。

口笛で「ピッピッピピピピ」とやるとさらに返事を返してくる。ホトトギスの鳴き声にはいくつか種類があり、オーソドックスな「テッペンカケタカ」に加え「テッペンカケタ」「カケカタ」などあり、声のテンションも様々である。ちなみに何を言っているのかは全然わからない。

この遊びをホトトギスのみならずウグイスにもやっている。ウグイスは最近鳴き声の種類と意味が少しだけわかってきた。

どうやら「ホーホケキョ」は安全、「ケキョケキョケキョ」と鳴くときは安全じゃない、らしい。

だから向こうが「ホーホケキョ」と鳴いたあとこちらが「ケキョケキョケキョ」と返すとしばらく無言になる。反対にホーホケキョに同じように返すと永遠に応酬が続くことになる。

若干の田舎臭さも感じるが、春から初夏にかけてのちょっとした遊びである。

ホトトギスといえば、家のバイカウツギの花がきれいに咲いている。

唱歌「夏は来ぬ」の初めの部分「卯の花の匂う垣根に」、これを思い庭のバイカウツギの花に「一体どんな匂いだろう」と鼻を近づけてみた。嗅覚は人並みだと思うが、その嗅覚によるとバイカウツギに匂いはなかった。微かに香りはするが、無臭に近い。

この「卯の花の匂う垣根に」とはその微かに香るもののことを言っているのか卯の花が咲き乱れている視覚的なものを「匂い」と表現したのかわからないが、どれにせよこの歌いだしを想うだけで思わずうきうきとした初夏の風情を思い起こさせられ、今年も田んぼの水入れが始まるのかと、やっと一年が始まった気になる。

最近テレビでもインターネットでも、開けば新型コロナウイルス関連の暗いニュースや評論ばかり。

見るだけ心が殺伐としていくようで、何よりも生命力が削られていくようで、テレビもインターネットも可能な限り見ないようにしている。

どんな時でも、せめて心の中だけはバイカウツギの真っ白い花びらのように明るく何事にも左右されずにいたいものだとしみじみと思っている。

2020.5.30 高野良輔(51期pf)